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東京高等裁判所 昭和37年(う)1046号 判決

控訴人 被告人 西田知治

弁護人 白石信明

検察官 築信夫

主文

原判決を破棄する。

被告人を禁錮一年六月に処する。

理由

職権をもつて原判決の法律の適用の当否について按ずるに、原審は原判示一、二において、同一の業務上の過失により人身事故と家屋損壊事故とを惹起したことを認定しているに拘らず、それらに対する法律の適用については、これを刑法第二百十一条と道路交通法第百十六条に各該当する罪の併合罪(刑法第四十五条前段該当)であるとして処断していることが明らかであるところ、右の如き事実関係では、これを一個の業務上の過失により数個の罪名に触れる場合であるとして、刑法第五十四条第一項前段に問擬すべき筋合であると認められるから、原判決はこの点において判決に影響を及ぼすべき法令適用上の過誤を冒しており、破棄を免れないというべきである。

よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に則り、原判決を破棄すべく、但し、同法第四百条但書により当裁判所において更に判決をなすべく、原判決が適法に確定した事実関係に基づき左のとおり法律の適用をする。

すなわち、原判示一の所為は、刑法第二百十一条、罰金等臨時措置法第二条第三条に、同二の所為は、道路交通法第百十六条前段に、同三の所為は、道路交通法第百十八条第一項第二号、第六十五条に各該当するところ、以上一、二は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条を適用して重い一の罪の刑に従い、所定刑中禁錮刑を選択すべく、また、右三の罪については所定刑中懲役刑を選択した上、以上は同法第四十五条前段所定の併合罪であるから、同法第四十七条本文及び但書第十条により最も重い右禁錮刑につき法定の加重をした刑期範囲内において、被告人を禁錮一年六月に処するべきものとし、主文のとおり判決する。

(その余の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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